2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧
「やみなべの陰謀」 田中哲弥著 ハヤカワ文庫JA を読む。 嫌いじゃないけど、確かに笑ったけど、これは何と言っていいか。。。という小説。 一言で言えば、漫画ですね、文字で書かれた。とってもライトになった筒井康隆って感じです。 この著者は、明石在住…
井の頭公園にて。昨夜。 千鳥が淵にて。今日。
種を蒔く作業は、翌日から開始した。前日に、肥料となる砕いた書物を、塔の側に大量に用意しておいた。それを大きな袋に詰めて持ち運んだ。種を埋める穴を掘り、種をそこに落とし込み、上から書物の残骸を被せ、さらにその上に土を掛けた。それを、書物十四…
男はそれきり口をつぐみ、姿は遠い陰画のように、平坦になって、背景と溶け合い始めた。 男の姿がすっかり消えてしまうと、部屋にはただ青い光だけが残った。 翌日から、塔での生活が始まった。 男に言われたように、私は一粒の種を窓から放り投げると、それ…
時間の旅? そうだ。 それは、どういう旅なのでしょうか。 為すべきことを為す旅だ、と男は言った。座標軸は固定されたのだから、為すべきことを為し、時が重なるのを待たねばならない。云わば、佇み続けるという旅だ。お前には出来るだろうか? 他に道がな…
「泥の河」 小栗康平監督 1986年 東宝 を観る。 宮本輝のデビュー作の映画化作品であり、小栗監督の初監督作品でもある。 この作品は、モスクワ映画賞銀賞をはじめ、様々な賞を受賞している。 まだ戦争の爪あとが残る昭和三十年代の大阪を舞台にした作品。 …
人の気配は、果たして気のせいではなかった。部屋の中心に位置している机に向かい、項垂れるようにして椅子に座っている人影が見えた。部屋の中の色彩のせいだろうが、酷く青ざめた印象の、年老いた痩せた男だった。その男は、私が彼に眼差しを注いでいると…
どのくらいの時間階段を上り続けているのか、一段上がる毎にそれに比例して恐怖心も増してゆくという状態は、時間の感覚を麻痺させてしまう。私はただ上だけを見つめて、昇り続けた。 やがて終点がやってきた。階段を昇りきった時、私は円形の広間に立ってい…
葛西海浜公園は、東京湾に面した人工の海岸線。 風の強い時が多く、 スポーツカイトの練習場にもなっている。 大潮の干潮時、 現れる砂浜はどこか汚らしいが、 見詰めていると、 時々、不思議な気分になる。 そのことについては、 上手く言えそうにない。
昨日、 「婦系図」 三隅研次監督 1962年 大映 を観た。 「別れろ切れろは芸者の時に言う言葉……」で有名な、泉鏡花原作の物語の映画化作品。主演は市川雷蔵。 映像がどうだとかいうより、原作が良く出来ているというタイプの作品で、さすがに飽きない。尾崎紅…
カルメン故郷に帰る 木下恵介監督 1951年 松竹 を観る。 この映画は、好きです。 日本で初めてのカラー映画ということ。 同時に、極めて上質の人間喜劇。 以前、同監督の「喜びも悲しみも幾年月」を観たときも思ったけれど、日本の風景を、まるで外国のよう…
「雨月物語」 溝口健二監督 1953年 大映映画 を観る。 面白かった。 ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞したというこの作品は、上田秋成の雨月物語から「蛇性の婬」と「浅茅が宿」をベースにしたもの。原作とは印象が違うけれど、映像も美しく、夜も遅い…
「流れる」 成瀬巳喜男監督 1956年 東宝映画 を観た。とてもよい映画だった。 最近、日本の昔の映画を、たまに観る。 ハリウッドの映画に食傷しているからかもしれない。 この映画は、芸者の置屋を舞台にした、幸田文の小説を映画化したもの。本当に良く出来…
銀色の塔は真下に立つと、天を刺しているかのように高く、鋭かった。見上げても、どれほどの高さか、容易には想像できない。塔の肌は、鈍い銀色で、そこにまるで血管のように、枯れて色を失った蔦のような文様が浮き出ていた。それは、装飾なのか、それとも…
桃色の月は、形が定かではなかった。確かに丸い形はしているのだが、震えるようにその輪郭が揺れていて、くっきりとした形を取ることがなかった。じっと見つめれば見つめるほど、その輪郭が曖昧に感じるのだった。 月は、そのようにして明確さを欠いたまま、…
昨日の日曜日は、今年初めて、三浦半島へ行った。 暖かく、風もない穏やかな一日。三浦海岸で河津桜を見た後(もう半ば葉桜になっていた)、バスで毘沙門へ。そこから、盗人狩を経由し、三崎港へ歩いた。 三崎の町では、裏通りの魚屋でサバの干物とタナゴを…